Clásicos japoneses con furigana
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あかいらくだ
赤い駱駝
梅崎 春生
Lee 赤い駱駝 (あかいらくだ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 11.820 caracteres · 24 pantallas
何でもないことだが、この夕方のことだけは、ふしぎにおれの記憶につよく残っている。思えばあいつと二人だけで、軍務以外の話をしたのも、この時だったせいなんだろう。またいつもギクシャク張りつめて、生地をかくしているあいつの、素顔をふとのぞいた気がしたためかも知れない。それもしかし、おれの夕焼の感傷だったのかも判らないのだが。
それから十日ほども経った頃かしら。突然戦争が終ったのは。
正午のラジオの天皇の声は、があがあ割れるばかりでうまく聞きとれなかったが、通信士がその軍用電報の写しをもって士官室に知らせにきた時は、おれたちはそれぞれ烈しい衝動をうけた。そこに居合せたものは皆、しばらくしんとなった。あんな張りつめた沈黙にあうことは、生涯にもしばしばはないことだろうな。今思うとその衝動も、各人によって少しずつ異っていただろうが、おれはと言えば、強い風に逆らって歩いていて、いきなりぱたっと風が止み、肩すかしを食ってよろめくような、そしておそろしく不安定な気持がした。そしてその瞬間がすぎると、自分を押えつけていたものがすべて、こなごなに砕け散った開放感が、やがておれにも起ってきた。