Clásicos japoneses con furigana
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くにさだえがく
鏡花短篇集 川村二郎編
泉 鏡花
Lee 鏡花短篇集 川村二郎編 (くにさだえがく) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 19.644 caracteres · 40 pantallas
雛市が立つらしい、が、絵合の貝一つ、誰もおらぬ。唯、二、三町春の真昼に、人通りが一人もない。何故か憚られて、手を触れても見なかった。緋の毛氈は、何処のか座敷から柳の梢を倒に映る雛壇の影かも知れない。夢を見るように、橋へかかると、これも白い虹が来て群青の水を飲むようであった。あれあれ雀が飛ぶように、おさえの端の石がころころと動くと、柔かい風に毛氈を捲いて、ひらひらと柳の下枝に搦む。
私は愕然として火を思った。
何処ともなしに、キリリキリリと、軋る轅の車の響。
鞠子は霞む長橋の阿部川の橋の板を、あっちこっち、ちらちらと陽炎が遊んでいる。
時に蒼空に富士を見た。
若き娘に幸あれと、餅屋の前を通過ぎつつ、
――若い衆、綺麗な娘さんだね、いい婿さんが持たせたいね――
――ええ、餅屋の婿さんは知りませんが、向う側のあの長い塀、それ、柳のわきの裏門のありますお邸は、……旦那、大財産家でございましてな。つい近い頃、東京から、それはそれは美しい奥さんが見えましたよ――
何とこうした時は、見ぬ恋にも憧憬れよう。
欲いのは――もしか出来たら――偐紫の源氏雛、姿も国貞の錦絵ぐらいな、花桐を第一に、藤の方、紫、黄昏、桂木、桂木は人も知った朧月夜の事である。