Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Lee 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 141.786 caracteres · 278 pantallas
今頃何しに――と疑うように、尼さんが僕らの跫音に外をのぞいていた。そこの屋根を下に見る程度まで詩仙堂の裏をのぼってゆくと、松のたたずまいや境内の地域は、かなりな社殿のあったことを思わせるが、今ではただ、蜜蜂の箱ほどな八ツのお宮が、八ヵ所に寂しく並んでいるだけで、昔のさまは偲びようもない。
八大神社はいうまでもなく、八つの神々を一つ地に祠ったものだ。けれどもその中にも八幡様は在さなかった。してみると、武蔵が足を止めて祈ろうとした社は、ここでもなかったのかとちょっと落胆する。
――だが、その高い土地から立って、一乗寺下り松の追分を眼の下に見おろすと、僕には何かしら当時――その払暁に武蔵がどう闘いの地へ臨もうかと苦念したかという気持が突然暗い松かぜの中から囁かれて解けたような暗示を受けた。
それは、無性をしないで、書く前に地理を踏んだ天恵の賜物だと思った。机のうえの構想では描けない想像が、しかもかなり自信をもって胸に描けてくるのだった。
おびただしい吉岡の一門一族の人数はまた、どう武蔵を迎えたろうかを、そこに立って考えてみると、下り松と目印を中心にして、あの追分から三方にわかれている京都からの道へ、それぞれ備えを伏せて待っていたに違いなかろうと思う。