Clásicos japoneses con furigana
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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Lee 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 213.575 caracteres · 424 pantallas
「おや?」と玄関のスリッパに足をのせながら考える。ここの家にはむかし――といっても宮本武蔵を朝日に連載中のころだが――友人の画家野口駿尾氏とふたりで幾日かいたことがある。そのころは、旅館ではなく、空家のような邸内に爺やか婆やがいたに過ぎない。駿尾君の兄の野口遵氏――あの北朝鮮の世界的ダムを完成させた人の別荘か何かだったらしい。
その時の旅行目的は、熊本を中心に、武蔵に関する史料蒐集にあったのだが、もっぱら郊外の一日亭に沈酔して、二人で“木挽ぶし”ばかりを稽古していた。音痴のぼくは落第、別府へ戻って、原稿に追われ出したのが、この家だった。いま奥に坐ってみると、その時のペルシャ絨毯が、まだそのまま敷いてある。ちょっと、撫でてみたい気もちになった。
「むりでしょう、田染行きは」「むりをしてまで、行くほどの価値があるかないか」「田染へ行ったら、由布院へは、行かれませんが」
Hさん、Iさん、支局の人々などの間で、さっそくスケジュールが検討され出す。これは、予定外だったらしい。杉本画伯が、出発前に、この別府出身の佐藤敬画伯から、「ぜひ田染の石仏を見給え」とすすめられていたのだとある。