Clásicos japoneses con furigana
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きりのばんしゃ
霧の蕃社
中村 地平
Lee 霧の蕃社 (きりのばんしゃ) de 中村 地平 (なかむらちへい) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 28.389 caracteres · 57 pantallas
モーナルーダオにはテワスルーダオという妹がいる。兄に似て大柄な女であったが、眼が濡れたように美しく、美人の名は付近に高かった。
霧社警察分署勤務の内地人巡査近藤儀三郎は、このテワスルーダオに結婚を申しこんだ。テワスに魅力を感じたためであるが、いったいその頃は、理蕃政策上、内地人巡査が蕃婦と結婚することは、上司の方でも大に奨励していたのである。
結婚の申しこみを受けた時、テワスに否応のある筈はなかった。蕃人の女が内地人の男に憧憬を感じているのは、昔も今も同じである。しかも、この場合相手は普通の男ではない。結婚すれば大人(巡査)の奥さんになれるのである。テワスは有頂天にさえなっていた。
しかし、兄のモーナは妹の結婚にいくらかの躊躇を感じた。普通蕃人の男たち、特に因習を貴ぶ老人たちには、自分たちの仲間が他の種族と結婚することは喜ばない気風がある。モーナは頭目である。部落の習慣や気風やに責任をもつべき地位に在る以上、それをおしきって社内に不平の種をまくのは許されないのである。しかし、妹のテワスがその結婚に乗り気になり、邪気なく噪いでいるのを眼の辺りに眺めると、さすがに、兄としての別趣な感情も湧く。