Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

ja-reading.com

Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

かぜたちぬ

風立ちぬ

堀 辰雄

Lee 風立ちぬ (かぜたちぬ) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 54.998 caracteres · 108 pantallas

Aozora Bunko

「お前、家へ帰りたいのだろう?」私はついと心に浮んだ最初の言葉を思わずも口に出した。

そのあとですぐ私は不安そうに節子の目を求めた。彼女は殆どすげないような目つきで私を見つめ返していたが、急にその目を反らせながら、

「ええ、なんだか帰りたくなっちゃったわ」と聞えるか聞えない位な、かすれた声で言った。

私は脣を噛んだまま、目立たないようにベッドの側を離れて、窓ぎわの方へ歩み寄った。

私の背後で彼女が少し顫声で言った。「御免なさいね。……だけど、いま一寸の間だけだわ。……こんな気持、じきに直るわ……」

私は窓のところに両手を組んだまま、言葉もなく立っていた。山々の麓にはもう暗が塊まっていた。しかし山頂にはまだ幽かに光が漂っていた。突然咽をしめつけられるような恐怖が私を襲ってきた。私はいきなり病人の方をふり向いた。彼女は両手で顔を押さえていた。急に何もかもが自分達から失われて行ってしまいそうな、不安な気持で一ぱいになりながら、私はベッドに駈けよって、その手を彼女の顔から無理に除けた。彼女は私に抗おうとしなかった。

高いほどな額、もう静かな光さえ見せている目、引きしまった口もと、――何一ついつもと少しも変っていず、いつもよりかもっともっと犯し難いように私には思われた。