Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

ja-reading.com

Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.

なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

Lee 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 56.957 caracteres · 114 pantallas

Aozora Bunko

陽の前に立っても、かれには影がないようだ。

岩から岩へチロチロ流れてくる雪解の水に、世阿弥は、ガクリと膝をついた。藁でつかねた麻のような髪を濡らして撫であげた。

そして、その清冽に口をそそぎかけた時、かれは、意外な物を見つけだした。あわててうがいの水を吐いて、向うの草むらへ飛びついた。

そこに四、五本の花梨の木が生えていた。秋から冬にかけて黄色い果実がつく頃には、この樹の実がもつ特色のある芳香が、世阿弥をひどく慰めてくれるので、友達のような気がする樹である。今みると、その木の根にからむ雑草の中に、一本の、真新しい狩矢が突っ立っている。

抜いてみると、矢羽はぜいたくな鷹の石打、やじりは槇の葉形のドキドキするものであった。それに錆がみえないところから察するに、つい、昨日かきょうの流れ矢であろうと思われる。

「ほ、また誰か、徳島城の者が、山へムダ矢を放ちにきているな……」

こんなことをつぶやきながら、世阿弥はそれをつかんで、洞窟の前へ戻ってきた。そして、日光に目を慣らしてから、改めて、その矢骨をズーと眺め廻していると、やじり二寸ほど上がったところに、沈金彫で蚤のような細字。