Clásicos japoneses con furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lee 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) de 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 127.675 caracteres · 254 pantallas
ました。歌は百人一首だけがお馴染だったのです。
「お祖母様はお上手ね。結構ですからお書きになったら。」
「筆なんか持ったことはないよ。お前書いて置いて、林が帰ったら見せておくれ。誰にもいってはいやだよ。」
恥しそうな御様子です。
明くる日、帰宅せられた時はなかなかの混雑でしたが、少しの合間に赤い袖無しを著て、ちょこちょこと座敷へ出て、「御無事でおめでとう」と、丁寧に挨拶をなさいました。
その夜、お客が遠退いた時に、歌を書いた紙を私がそっと出しましたら、お兄さんはそれを見て、にこにこ笑っていられました。
翌日出勤の時に、「お祖母様、歌をありがとう」と、声をお懸けになりましたら、首を縮めて、小さな体を一層小さくなすったということでした。
それから気の張がなくなったというのか、めっきり弱くなられましたが、三、四月頃からは米寿の祝をして上げるといわれたのをひどく喜んで、いつもその気分でいられるのでした。人が見えて、そこらがごたごたしますと、「お客様は大勢かい。賑かだね」などといわれます。それで七月亡くなられる時は、もうお湯も召上らず、ただすやすやと息をして、一週間目に終られました。