Classiques japonais avec furigana
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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
Lisez おじさんの話 (おじさんのはなし) de 小山 清 (こやまきよし) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 232 caractères · 42 écrans
蝦蟇口から、一葉の写真をとりだして私に示した。それは若い、三十前後の女の人の写真であった。
「おれの娘だよ。」
とおじさんは云った。そしておじさんは話した。いつぞや男の人が尋ねてきたとき、娘に会ったのだと。おじさんが国を飛び出したときは、娘さんはまだ母親のはらのなかにいた。娘さんも既に片附いて人妻であるが、三十年も昔の父親に、まだ見たこともない父親に会いにきたのである。してみると、娘さんはその生い立ちの途上で、生れ出る前に自分を捨てた父親のほかには、父親を求めることが出来なかったものと見える。同郷のかつてのおじさんの知合の男が東京見物をするのに伴いてきたのか、それとも、わざわざおじさんに会わせるために、その男が娘さんに附添ってきたのか。やはりなにかことのついでがあったのだろう。それにしてもおじさんも娘さんも、三十年ぶりに親子の対面をしたわけである。
「靖国神社へ行ったよ。」とおじさんは云った。
「二拾円呉れてやった。けちな真似もできないからね。奮発したよ。」
とおじさんは云った。
写真はそのとき娘さんがおじさんに渡したものであろう。
戦争がはげしくなるにつれて、前述のように店員は戦争にとられていなくなり、私も軍需工場に徴用された。