Classiques japonais avec furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lisez おせん de 邦枝 完二 (くにえだかんじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 074 caractères · 148 écrans
「はッはッは、若旦那、まだそんなことを、いっといでなさるんでござんすかい。耳寄りの話を聞いてめえりやした。いい智恵をお貸し申しやすから、小僧さんのしくじりなんざさっぱり水に流しておやんなさいまし」
中番頭から小僧達まで、一同の顔が一齊に松五郎の方へ向き直った。が、徳太郎は暖簾口から見世の方を睨みつけたまま、返事もしなかった。
「もし、若旦那。悪いこたァ申しやせん。お前さんが、鯱鉾立をしてお喜びなさる、うれしい話を聞いてめえりやしたんで。――ここで話しちゃならねえと仰しゃるんなら、そちらへ行ってお話しいたしやす。着物もぬれちゃァ居りやせん。どうでげす。それともこのまま帰りやしょうか」
被っていた桐油を、見世の隅へかなぐり棄てて、ふところから取出した鉈豆煙管へ、叺の粉煙草を器用に詰めた松五郎は、にゅッと煙草盆へ手を伸ばしながら、ニヤリと笑って暖簾口を見詰めた。
「松つぁん」
「へえ」
「若旦那が、こっちへとおいなさる」
「そいつァどうも。――」
「おっと待った。その足で揚がられちゃかなわない。辰どん、裏の盥へ水を汲みな」
番頭の幸兵衛は、壁の荒塗りのように汚泥の揚がっている松五郎の脛を、渋い顔をしてじっと見守った。