Classiques japonais avec furigana
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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
Lisez お久美さんと其の周囲 (おくみさんとそのしゅうい) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 75 369 caractères · 149 écrans
けれ共総ては無駄で有った。
漸う息苦しくない呼吸を始めた時、いきなり耳元で途轍もなく大きな声が、
「旦那、どっちから入るんですえ。
向うからですかい。
と怒鳴った事によってすっかり乱されて仕舞った。
山田の主人が、
「うん向うから。
と云う声を夢の様に聞きながらお久美さんは両手をしっかり握り合わせて化石した様に夕闇の葉陰から音もなく這い出る中に立って居た。
間もなく主屋に人声がざわめいて、
「お久美は一体どこへ行ったんだい。
お前捜してお出で。
とお関が云って居るのも手に取る様に聞えて居たけれ共お久美さんは動こうとも仕なかった。
パタパタと草履を叩きつける様にして小女はズーッと葡萄畑の方へ来て、入るのを怖れる様に入口の木戸を半開きにして、
「お久美さん居ないんですか。
皆さんがお帰りですよ。
と大声を出した。
喉が渇いた様な気のして居たお久美さんはすぐ声を出せなかった。
暫く黙って返事を待って居た小女がもう一度、
「お久美さん居らっしゃらないんですか。
と云った時漸々、
「なあに。
と云って出て来たお久美さんの顔は小女が気味を悪くしたほど真面目に凝り固まって居た。
非常に厳な気持でお久美さんが主屋へ行った時は山田の主人と新らしく来た人とが向い合って座って居るわきでお関が突き衿を仕い仕い大きく団扇の風を送って居る所だった。