Classiques japonais avec furigana
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さようなら
さようなら
田中 英光
Lisez さようなら de 田中 英光 (たなかひでみつ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 251 caractères · 44 écrans
而しこうした際にも、止むを得ぬ運命主義者になっていたぼくは、(それを彼らの宿命とのみ感じ)、極めてあっさり、「さようなら」とだけ云ってきたものだ。当時ぼくたちは、毎日のように死者を眺め、更に前線の友人たちの玉砕をきかされていたので、自分たちにも明日知れぬ命との実感があり、その場合、ぼくは所有した時から既にその存在を重荷とし、いたずらに苦労ばかりさせてきた自分の妻子の、ぼくを失った後の運命を思うのがいちばんの苦痛だった。だがぼくは、(妻子には彼ら夫々の、自分と違った運命がある。その運命に任せておこう)と単純に信じ、自分は工場の一社員寮の舎監となり、妻子を伊豆の田舎に疎開させた際、やはり彼らにも心中であっさり、「さようなら」を告げておいたのである。
その時のぼくの運命主義、一度、妻子に告げた、「さようなら」の別離感が、敗戦後すでに四年経った現在のぼくの心中に未だ尾を曳いていて、最近、ぼくは自分の家庭を解体させるような愚行を演じた際にも、それがある程度、ぼくの心理を左右したものである。誇張していえば、あの戦争でぼくは余りにも度々、親しい人たちに冷たい「さようなら」