Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あわもりものがたり

『たぬき汁』以後

佐藤 垢石

Lisez 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) de 佐藤 垢石 (さとうこうせき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 118 470 caractères · 244 écrans

Aozora Bunko

二

安政六年の春、二十七歳になった石坂儀右衛門は、飄然として家出した。遺書に、水戸の東湖塾へ行くと記してあるのみであった。二、三年前に利根の対岸宮郷村の豪農から嫁たみを貰い、昨秋長男の裕八郎が出生してから、まだ半歳とたっていない。

殆ど無断にもひとしい家出に、家のものは驚いた。しかし当時、尊王攘夷の熱が青年の間に高かった世の中であったから、儀右衛門の平素の行状から推察して、水戸行は恐らく偽りではあるまいと思ったのである。そこで直ぐ人を水戸へ急行させて、儀右衛門の所在を探ねさせたけれど、皆目その消息を知ることができなかった。その後も屡々水戸へ人を派したが、水府は東湖塾を中心として混乱していて、一人の青年の行衛などまるで尋ねあてる由もなかった。

石坂家では、その後儀右衛門の捜索を思い止まった。それから二十年ばかりたって、坊やの裕八郎は二十一歳になった。その秋、母の許しを得て上越国境の四万温泉に遊び、十日間ばかりの田村茂三郎旅館に滞在して沼之上のわが家へ帰ってきた。その時はもう、明治十二、三年になっていたのである。裕八郎は日ごろ名勝旧跡、神社仏閣などを探るのが趣味で、読書も好み甚だ快活な生活の持ち主であったが、四万温泉の旅から帰ってくると、急に人柄が憂鬱になったのである。