Classiques japonais avec furigana
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あわもりものがたり
『たぬき汁』以後
佐藤 垢石
Lisez 『たぬき汁』以後 (あわもりものがたり) de 佐藤 垢石 (さとうこうせき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 118 470 caractères · 244 écrans
水際に立つと、自ら悽愴の気を催す淵である。この地方の人々は、これを相俣の淵と呼んでいるのである。
この淵に、よほど古い昔から恐ろしく大きな岩魚が棲んでいた。淵の、主である。魚画を描いて日本随一と称せられる岸浪百艸居翁の研究したところによると、岩魚の相貌には男型と女型の二種あるというが、相俣淵の主は女型に類する方であった。
悪食の上に縦横無尽に行動する岩魚は、鋭い歯を持って口は深く割れ、丸い大きな眼に、いかめしい顔の造作を備えている。しかし、女性型の岩魚は男性型に比べて、顔の容に一種の優しみを持っているので区別されるのである。殊に背の鱗は青銀色に、腹の方の膚は白銀色に、体側には両面の肩から尾筒に至まで、朱く輝く瑠璃色の斑点を鏤めたように浮かせ、あまたの魚類のうちで岩魚は、まれに見るおしゃれであるのである。その麗容な岩魚の泳ぐ大きな姿を、晩秋の水の澄んだ真昼に、ときどき村人が淵の中層に見るという。
七
相俣淵の岩魚は、夜な夜な法師温泉の湯槽に美しい姿を現わすということも、この地方の人々に語り伝えられている。
一体、赤谷川の本流に添うて笹の湯、さらにその上流に古川温泉などがあるのであるけれどなにを好んで近くの温泉を求めず猿ヶ京、吹路、合瀬、永井などをへて遙々と法師温泉の湯槽に浸るのであろうか。