Classiques japonais avec furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lisez つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 725 caractères · 148 écrans
て上げたいような気もしたのである。
「さしつかえは無いのか。」
「いやなおじさんねえ。大丈夫よ。」
「間借をしているんだろう。」
「ええ。わたし一人きり二階を借りているんですの。下のおばさんも一人きりですから、誰にも遠慮は入りません。」
「それじゃちょっとお邪魔をして行こうかね。」
「ええ。寄っていらっしゃいよ。おばさんは誰か男の人が来ると、何でもない人でも、いやに気をきかして、すぐ外へ行ってしまうんですよ。あんまり気が早いんで気まりのわるい事がある位ですわ。」
君江は堀端から横町へ曲る時、折好く酒屋の若いものが路端に涼んでいたのを見て、麦酒三本と蟹の鑵詰とをいい付け、「おばさん。唯今。」といいながら川島を二階へ案内した。留守の中老婆が掃除をしたと見え、鏡台の鏡にも友褝の片が掛けられ、六畳の間にはもう夜具が敷きのべてあった。川島は障子際に突立ったまま内の様子を見てびっくりしたように目ばかり光らせているので、君江は何の事とも察しがつかず、「おばさんはまだ病気だと思っているのよ。今片づけますわ。」と押入の襖をあけて枕をしまいかける。
川島は始めて我に返ったらしく狼狽えた調子で、「君子さん。