Classiques japonais avec furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lisez つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 725 caractères · 148 écrans
「君江さん。どうでした。何か手がかりがありましたか。」
「さア。何だか、いろいろな事を言われたけれど、何の事だかわけがわからないのよ。わたしの方でも別に何ともきいては見なかったんだけれど。」
「それじゃ駄目だ。君江さんと来たら実にのん気だからな。」
「壱円損したわ。」と君江は人に問われて始めて占者の判断の甚要領を得ていなかった事と、自分のきき方も随分不熱心であった事に心づいた。最少し向の困るくらい委しくこまかい事まできけばよかったという気がした。
「でもねえ、小松さん。当分今の通りで別条はないんですとさ。覚えているのはそれッきりよ。いろんな事を言われたけれど『何が何だかわからないのヨ』なのよ。まったくさ。何しろ占を見てもらうのは生れて始てでしょう。見てもらいつけないと駄目なものねえ。占もやっぱり聞方があるんじゃないか知ら。」
「占いかたはあっても、別に聞き方はないでしょう。」
「それでも、お医者さまでも始めて見てもらう時には、いろいろこっちから言わなくっちゃ、いけないッていうじゃないの。だから占や何かでもやっぱりそうだろうと思うわ。」
表梯子の方から蝶子という三十越したでっぷりした大年増が拾円紙幣を手にして、「お会計を願います。