Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Lisez つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 725 caractères · 148 écrans

Aozora Bunko

馬鹿にくさい。猫か犬の糞だろう。」

「だから、外で待っていらっしゃいッて言ったんじゃないの。ほんとに臭いわ。あなた。」と君江は寄添う矢田からその身を離して、「わたし、草履だから、足袋へくっ付けちゃ、いやヨ。」

矢田は歩きながら、砂利に靴の裏をこすりこすりもとの堀端へ出ると、丁度曲角の軒下に薪と炭俵とが積んであったのでやっと靴の掃除をし終った時、呼びもしない円タクが二人の前に停った。

「神楽阪。五十銭。」と矢田は君江の手を取って、車に乗り、「阪の下で降りよう。それから少し歩こうじゃないか。」

「そうねえ。」

「今夜は何となく夜通し歩きたいような気がするんだよ。」と矢田は腕をまわして軽く君江を抱き寄せると、君江はそのまま寄りかかって、何も彼も承知していながら、わざと、

「矢さん。一体どこへ行くの。」ときいた。

矢田の方でも随分白ばッくれた女だとは思いながら、その経歴については何事も知らないので、表面は摺れていても、その実案外それほどではないのかという気もするので、この場合は女の仕向けるがまま至極おとなしい女給さんとして取扱っていれば間違いはないと、君江の耳元へ口を寄せて、「待合だよ。