Classiques japonais avec furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lisez つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 725 caractères · 148 écrans
」
二人は夜ふけの風の涼しさと堀端のさびしさを好い事に戯れながら歩いて新見附を曲り、一口阪の電車通から、三番町の横町に折れて、軒燈に桐花家とかいた芸者家の門口に立寄った。夏の夜の事で、その辺の芸者家ではいずれもまだ戸を明けたまま、芸者は門口の涼台に腰をかけて話をしているのを、男はなれなれしく、
「京葉さんはいますか。」ときくと、直に家の内から、小づくりの円顔。髪はつぶしにたけながを結んだ女が腰の物一枚、裸体のまま上框へ出て来て、
「あら、御一緒。まアうれしいわね。わたし今帰って来たところ。丁度よかったわ。」
「どこかいい家を教えろよ。ゆっくり話をするから。」
「そうねえ。それじゃア……。」と裸体の女は行先を男に囁くと、二人はそのまま歩いて四ツ角をまがる。
ここまで跡をつけて来て路地のかげに身をひそめていた清岡は、万事があまりに都合好く進捗して行くので、このまま中途から帰るわけには行かなくなった。頃合いを計って、清岡は君江のつれられて行った同じ待合へと、振りの客になり済まして上り込み、女中には勘定を先に払って、なりたけおとなしい若い芸者をといい付け、素知らぬ振りで寝てしまった。