Classiques japonais avec furigana
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やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
Lisez やぶからし de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 476 caractères · 44 écrans
そうしているうちに涙がこぼれてきた。悲しいとも、なさけないとも思わなかった。どんな感情もなしに、ただ涙がこぼれるのであった。まもなく、あの方は角樽を持って戻り、汁椀へ酒を注いで飲み始めた。また裸にされるものと思っていたし、そのときはこうと決心していたのだが、あの方は夜具の脇にあぐらをかいて坐り、まるでなにかに追われてでもいるような、せかせかした調子で飲み続けた。
「おれは生れ変ってみせる」とあの方は独り言のように云った、「おまえが妻になってくれればできる、私は弱い人間だ、私には支えになるものが必要なんだ、これで大丈夫、おまえが妻になってくれたことで、私はりっぱに立ち直ってみせるよ」
角樽がからになるまえに、あの方は正体もなく酔い、夜具へのめりかかって寝てしまった。
わたくしは夜の明けるまで、寝衣のまま畳の上に坐っていた。あの方に夜具を掛けてあげるときと、いちど手洗いに立ったほかは、坐った場所から少しも動かなかった。そのあいだなにを考えていたことだろう。いまでもかすかにおぼえているのは、あの方のどす黒い色をした胸、ひとかたまり毛の生えた、肋骨の段のあらわれた胸を、けんめいになって記憶から消し去ろうとしていたこと、もう一つは「死んでしまおう」