Classiques japonais avec furigana
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わがちち
わが父
宮本 百合子
Lisez わが父 (わがちち) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 314 caractères · 19 écrans
二月二日に父の葬儀を終り、なか一日置いた四日の朝、私は再びそれまでいた場所へ戻った。初めてそこへ行った時と同じ手続で或る小部屋へ入り自分の着物は一切脱いで、肌へつける物から洗いさらした藍い物ずくめになり、沢山並んで夫々番号のついている扉の一つの中に入って坐った。
私が、全く突然、父の死を知らされたのは一月三十日の午後三時頃のことであった。遮断されていた生活からいきなり激動の三日間を暮し、再び切れ目のない単調な寒さの中にかえって来て縁のない畳が三枚しいてあるところへ坐ると、堪え難い疲労が襲って来た。張りつめた寒さと痺れるような睡たさとで、私は坐ったまま居睡りをし始めた。丁度その時分から雪が降り出し、私が何かの物音で薄目をあけ、ついでそういう生活の条件の裡ではいつとなし習慣となっている動作で左手の高い窓を見上げると、細かい金網の網目のむこうで雪は益々盛に降りしきっている。次の日とその次の日、私は寝床についた。夜と昼との境もなく眠りつづけて、眠る間に目がさめて窓を見るといつ見ても金網のむこうで霏々と雪が降っている。父の真新しい墓標の上にもこの雪が降りつもっている、私は麻痺した頭でそう考えた。