Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

オランウータン

オランウータン

豊島 与志雄

Lisez オランウータン de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 947 caractères · 14 écrans

Aozora Bunko

立止って耳を澄ませば、たしかに祈念をこらしてる声だ。吐く息につれて高まり、引く息につれて低まり、文句はさらに分らないが、調子をとって断続する声の響きだ。

私はそこに佇んで、耳を、いや心を、傾けて聞いていた。訴えるでもない。怨むでもない、あやしいおののきが、私の身体につたわってくる……。

人の祈念は、たとえ白昼でも、殊に深夜では、わきから窺うものではない。或る忌わしい惑わしを受ける。私もその惑わしを受けたのであろうか。ポンポンと軽い拍手の音がして、黒い人影が立現れ、体格は頑丈で壮年らしいが、少し腰をまげた男が、草履ばきですたすたと、鳥居の列の中を、見返りもしないで、立去っていった後、私はそのあとにはいりこんで、狐格子の前にうずくまったのである。

土とも蝋とも香ともつかない、ごくかすかな匂いが、鼻をついてき、身体をつつむ。狐格子の中の暗がりには、鏡の面に、かすかな光があやしく漂っている。そして私は、先刻の男と丁度同じ場所に、同じ姿勢で、屈んでいるのだ。ただ私には祈りの文句がない。母の病気平癒も、私の恋愛の安泰も、研学の進歩も、其他凡て、その時の私の心に添わない。