Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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オンチ

オンチ

夢野 久作

Lisez オンチ de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 673 caractères · 42 écrans

Aozora Bunko

中野学士はジリジリと身構えを直しながらも左右の拳を握り締めた。「何だ君は……」

相手の巨漢は動かなかった。「俺は汽鑵部の又野という釜焚きだ」

「知っている。……職場以外の人間がこのデッキへ上る事は厳禁だぞ。俺はここの主任だぞッ」

中野学士の語尾が少し甲走った。又野の瞳がキラキラと光った。

「知っとる……貴様は今、何をしよった。俺の仲間の戸塚をどうしたんか」

「戸塚は自分で辷って落ちたんだ」

「……嘘吐け……」

「退けと云うたら退け……」

中野学士は相手が自分を殺すような乱暴者でない事を確信していたらしい。同時に自分の柔道の段位にも、相当の自信を持っていたらしく、イキナリ真正面から又野を突き退けてデッキの平面に立つと、間髪を容れず、立直って来る又野の足を目がけて、猛烈な足払いをかけた……が……ビクともしない……と思った瞬間に又野の巨大な両手が、中野学士の襟首にかかって、ギューギューと絞付けて来た。

「エベエベエベエベエベエベ……」

という奇妙な声を上げたと思うと中野学士は、背中と尻のふくらみを又野の両手に掴まれたまま、軽々と差上げられていた。

又野は怒りの余り、中野学士を火の海へ投込むつもりらしかったが……トタンに、それと察した中野学士が無言のままメチャクチャに手足を振まわし初めたので、又野は思わずヨロヨロとなって