Classiques japonais avec furigana
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ドグラ・マグラ
ドグラ・マグラ
夢野 久作
Lisez ドグラ・マグラ de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 424 847 caractères · 824 écrans
かたはら柳生の剣法に達し、又画流を土佐派に酌み、俳体を蕉風に受けて別に一風格を成す。長じて空坪と号し、ひたすら山水を慕ひて復、家を嗣ぐの志無し。然れども年長ずるに随ひ他に男子無きの故を以て妻帯を強ひらるゝ事一次ならず、学業未到の故を以て固辞すと雖、間葛藤を避くるに遑あらず。遂に、父坪右衛門の請により隠元老師の諭示を受くるに到るや、心機一転する処あり、
「二十五の今日まで聞かず不如帰」
といふ一句を吾家の門扉に付して家を出で法体となりて一笠一杖に身を托し、名勝旧跡を探りつゝ西を志す事一年に近く、長崎路より肥前唐津に入り来る。時に延宝二年春四月の末つかた、空坪年二十六歳なり。
空坪此地の景勝を巡りて賞翫する事一方ならず。虹の松原に因んで名を虹汀と改め、八景を選んで筆紙を展べ、自ら版に起して洽ねく江湖に頒たん事を念へり。かくて滞留すること半載あまり、折ふし晩秋の月円かなるに誘はれて旅宿を出で、虹の松原に上る。銀波、銀砂に列なる千古の名松は、清光の裡に風姿を悉くして、宛然、名工の墨技の天籟を帯びたるが如し。行く事一里、漁村浜崎を過ぎて興尚尽きず。更に流霜を逐ふ事半里にして夷の岬に到り、巌角に倚つて遥かに湾内の風光を望み、雁影を数へつゝ半宵に到りぬ。