Classiques japonais avec furigana
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ランスきこう
ランス紀行
岡本 綺堂
Lisez ランス紀行 (ランスきこう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 777 caractères · 12 écrans
同情も幾分か手伝って、どの人も余り廉くない絵葉書や果物を買った。丘の上にも塹壕がおびただしく続いていて、そこらにも鉄条網や砲弾の破片が見出された。丘の上にも立木はない。石の間には矢はり雛芥子が一面に咲いている。戦争が始まってから四年の間、芥子の花は夏ごとに紅く咲いていたのであろう。敵も味方もこの花を友として、苦しい塹壕生活を続けていたのであろう。そうして、この優しい花を見て故郷の妻子を思い出したのもあろう。この花よりも紅い血を流して死んだのもあろう。ある者は生き、ある者はほろび、或者は勝ち、ある者は敗れても、花は知らぬ顔をして今年の夏も咲いている。
これに対して、ある者を傷み、ある者を呪うべきではない。勿論、商船の無制限撃沈を試みたり、都市の空中攻撃を企てたりした責任者はある。併しながら戦争そのものは自然の勢である。欧州の大勢が行くべき道を歩んで、ゆくべき所へゆき着いたのである。その大勢に押流された人間は、敵も味方も悲惨である。野に咲く百合を見て、ソロモンの栄華を果敢なしと説いた神の子は、この芥子の花に対して何と考えるであろう。
坂を登るのでいよいよ汗になった我々は、干枯びたオレンジで渇を癒していると、汽車の時間が迫っているから早く自動車に乗れと催促される。