Classiques japonais avec furigana
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ラしのふえ
ラ氏の笛
松永 延造
Lisez ラ氏の笛 (ラしのふえ) de 松永 延造 (まつながえんぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 706 caractères · 18 écrans
彼れが最近何れ程、孤独に安んじ、自ら足る事以外に何物をも求めぬかを私は今更知って驚いた。
五
然しそのような愛情の行き違いから、唯一の女友達をさえ失って了ったラ氏は、時とすると、満足な心の中に、尚お嶮しい寂しさを感ずる事もあるらしかった。
そんな寂しさは彼れの胸中で幾分か変化して、次のような意地悪い行為となって表れた。
一週間後のある夕暮れ、ラ氏を不意に訪れたのは、某教会の日曜学校を監理している三十格好の好青年であった。彼れは最近にその愛妻を失ったとかで、態と質素な服をつけ、ボタンなども取れたものは取れたままに放置して、そんな無造作を楽しんでいる風さえ見えていた。
彼れはいきなり一面識もないラ氏に色々の慰撫的な言葉をかけた。けれどもラ氏は少しも喜びの色を表面へ現さぬばかりでなく、何を思ってか、「悪魔退治」という印度の脚本の事を語り出した。(この脚本は過日マセドニヤ丸乗組みの印度人達によって、実演された相である。)それから彼れは引き続いて、
「エスキモーの国には悪魔という言葉がない。だからエスキモー人へ向って、我れ我れがいくら悪魔の事を説明しても、そんな悪い者が此の世に居る訳もないといって、承知しない相だ。