Classiques japonais avec furigana
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リギさんじょうのいちや
リギ山上の一夜
斎藤 茂吉
Lisez リギ山上の一夜 (リギさんじょうのいちや) de 斎藤 茂吉 (さいとうもきち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 621 caractères · 14 écrans
女の膝のところには焚火の火明りがうつっているから、暁が未だほの暗いのであるが、太陽が暫くするとのぼる気配を示して、黄色の光の放射しかけているように画いている。その他の空の部分は黄・赤・紫・青など細かい顔料で埋めてある。
丹念で静かなこの絵は、アルプス高山国の農民を題材として、疲れた旅人の僕の心を慰めてくれたのであったが、今も僕は Rigi 山上にあってそれらの絵を思いおこし、その写象は一種の現実性を帯びて僕の眉間にあらわれるのであった。けれども僕はそういう静かな愛と神秘から、ハウプトマン劇にあるようなもっと熱したものにも聯想が移ったが、若い僧が山上にのぼって行くと、山羊の牝が寄って来て、僧の持っている聖典を食べてしまうあたり、豊かな娘のその紅い脣と心臓の鼓動と、そういうものにも移って行ったが、それは長続せずに消えた。物売の女らの帰りかけたこの丘は、恣に寒風が通り、湖水の光もそれを甲う山嶽も、その山嶽の上に無限に畳まって見える山嶽の雪も、ついに僕をして大戦後に起った熱烈難渋な芸術には親ましめなかった。
「だいぶ日が短かくなったようだな。やっぱりあの湖水の方が南らしいね」