Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひとつのできごと

一つの出来事

宮本 百合子

Lisez 一つの出来事 (ひとつのできごと) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 024 caractères · 23 écrans

Aozora Bunko

ユダヤ人だからではない、すべてこちらのあまり教養のない人間はそうなのである。

それ故私の無干渉主義は、立ち入った一度の交渉なしに今日まで進んで来たのである。

ところがちょうど昨夜、もうかれこれ十時近い頃であったろう、二階へ誰か女が訪ねて来たらしい様子がした。何かしきりに相談でもしていると見えて、開け放した階子口(はしごぐち)の戸を通して聞える声は、珍らしく真面目である。けれども、何を話しているのか内容は分らない。ただ空気を截(き)って虫が飛ぶように、ヒッシュヒッシュという力強い語尾だけが、連続した断音となって鼓膜を打つのである。

かなり男性的な抑揚をぼんやりと耳にしながら、仕事を仕続けていると、前から聴いていたのだろうGが突然、

「おや、あの人達はまた誰かに部屋を貸すんですね」

と云った。

彼の拾い集めた断片によると、下のユダヤ人の母親は、借りた二階のどの部屋かを、また今来ている女に貸す相談をしているのだそうだ。私はそれを聞くと、利口なものだなと思わずにはいられなかった。

お爺さんお婆さんは、新来の彼女等にいくらでも高価(たか)く自分達の部屋部屋を明けわたして利益を得ようとする。