Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans

Aozora Bunko

或いは戦いの、或いは屈服の、或いは苦しい情熱の、時折の閃めきが、二人の視線の中に織り込まれていた。然し間もなく、木下が室から出てゆくか、信子が座を外すかした。啓介は苛ら立ってくる自分の心をじっと押えた。

木下が室から出て行くと、信子は啓介の枕頭に寄って来た。そして氷嚢に手をあててみたり、気分はどうかと尋ねたりした。彼は「いい。」と答えた。彼女は床の間から鋏を取って、口拭きの紙を切った。その不真実な行為に、啓介は顔を渋めた。

「うるさい。後にしてくれ。」と彼は云った。

「はい。」と信子は取澄した返事をして、向うに身を退った。

啓介はじっとしていた。信子は黙っていた。そしてその沈黙が、やがて啓介には堪らない圧迫となってきた。信子は火鉢によりかかるようにして、畳の上に視線を落していた。石膏像のような冷たい横顔を彼の方に向けて、いつまでも身動きさえしなかった。

啓介は荒々しく寝返りをした。そして待った。氷嚢を額から外した。そして待った。紙を取って口を拭き、それを枕頭に投り出した。そして待った。再び寝返りをした。そして待った。わざと蒲団から手を長く出してみた。