Classiques japonais avec furigana
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にとうしゃにのるおとこ
二等車に乗る男
豊島 与志雄
Lisez 二等車に乗る男 (にとうしゃにのるおとこ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 342 caractères · 13 écrans
でその時、私は汽車の窓から、何気なく外を眺めていました。すると、後からつつーと電車が速力を早めて追ってきて、少し追いぬくかぬかぬまに、こんどは汽車の方が早くなりだして、電車が徐々に後れだしたんです。愉快だと思って電車の方を眺めると、向うの窓からも皆がこちらを見ています。その二等車の、粗らに並んでる顔の中に、耳の上で髪を縮らした、眉のつんとした鼻の高い、細長い年若な顔が一つあって、それをちらと見た時、おや……と私は思いました。どこかにはっきり見覚えがあるんです。と、こんどは少し電車の方がぬき出して、二三間先へ進んだかと思うまに、一寸の間相並んで進んで、それから俄に、丁度潮の引くような工合に、電車がすーっと後れていました。そして、例の女の顔が消えかかった瞬間に、私ははっと思い出したのです。それこそ、浜野の娘です。あれから一年ばかりになりますが、彼女が外に出かけたり縁側に立ってたりするところを、二階の窓から時々見たことのある、それとそっくりの顔なんです。
私はあせりだしました。けれども、もう電車はずんずん後れていって、汽車は益々速力を早めているんです。