Classiques japonais avec furigana
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なかなかしなぬあいつ
仲々死なぬ彼奴
海野 十三
Lisez 仲々死なぬ彼奴 (なかなかしなぬあいつ) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 216 caractères · 18 écrans
何処からとりよせたか、果物の王様といわれるマンゴーの生々したのを老人の枕頭に供えるものもあった。日頃健啖な大熊老人は、それ等の届けものの食料品を、とに角一と通りは味わってみるのであった。
中には、老人の箸のつけ方が少かったといって悲観するものがあるやら、あの果物がすくなくとも五万円に売れたろうと胸算用をする者もあった。
喜助は老人が病気になると、すぐさま勤めを休み、枕頭につめきって介抱をした。看護婦のよく行きとどいた世話振りよりも、喜助のヘマな手伝いの方が、どんなにか老人を喜ばせたり、元気づけたりしたかしれなかった。老人がいつになく枕があがりそうもない様子であるのを見てとると、喜助には大熊老人がいよいよ懐しいものに思われて来た。老人の容態が一歩悪化すると、喜助の食慾も一椀がところ減退した。彼は科学者の教育をうけたに似ず、心の中で心あたりのある明神様だとか、観音様などを、それからそれへと、いくつも並べ唱えては、老人が全快に向うことを祈った。しかしその効目はすこしも現れて来る模様がなかった。もしや、老人が此儘死んでしまうようなことがあれば、自分はどんなに淋しい身の上になることであろうか、それは帰るべき塒を失った仔鳥よりも、いく段か不見目であろうと思われる。