Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

Lisez 偸盗 (ちゅうとう) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 934 caractères · 97 écrans

Aozora Bunko

彼は思わず、ひざに力を入れながら、太刀の柄を握りしめて、老人の頸のあたりをじっと見た。わずかに残った胡麻塩の毛が、後頭部を半ばおおった下に、二筋の腱が、赤い鳥肌の皮膚のしわを、そこだけ目だたないように、のばしている。――太郎は、その頸を見た時に、不思議な憐憫を感じだした。

「人殺し。親殺し。うそつき。親殺し。親殺し。」

猪熊の爺は、つづけさまに絶叫しながら、ようやく、太郎のひざの下からはね起きた。はね起きると、すばやく倒れた遣戸を小盾にとって、きょろきょろ、目を左右にくばりながら、すきさえあれば、逃げようとする。――その一面に赤く地ばれのした、目も鼻もゆがんでいる、狡猾らしい顔を見ると、太郎は、今さらのように、殺さなかったのを後悔した。が、彼はおもむろに太刀の柄から手を離すと、彼自身をあわれむように苦笑をくちびるに浮かべながら、手近の古畳の上へしぶしぶ腰をおろした。

「おぬしを殺すような太刀は、持たぬわ。」

「殺せば、親殺しじゃて。」

彼の様子に安心した、猪熊の爺は、そろそろ遣戸の後ろから、にじり出ながら、太郎のすわったのと、すじかいに敷いた畳の上へ、自分も落ちつかない尻をすえた。