Classiques japonais avec furigana
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おとめのきとアブ・サルガ
処女の木とアブ・サルガ
野上 豊一郎
Lisez 処女の木とアブ・サルガ (おとめのきとアブ・サルガ) de 野上 豊一郎 (のがみとよいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 098 caractères · 20 écrans
入って一番に目を惹くものは、本陣の周囲に立つ十二本の大理石(内一本だけは花崗岩)の円柱と、祭壇と礼拝堂の前に置かれた木製の仕切屏風で、その上には『聖書』からの二三の事件が巧みに浮彫で描かれてあった。
クリプトには内陣の片隅から石の階段を踏んで下りるようになっている。その階段以下が此の建物の最古の部分で、イスラエルの国から逃げて来たマリアが赤ん坊のキリストを抱いて一個月間潜んでいたと伝えられる所はその下にあるというので、私たちは下りて行こうとしたが、石段を下りきらないうちに、水が一ぱいに湛えていて立ち止まらねばならなかった。一体これは何だと聞くと、ニルの水が氾濫期になって侵入したのだとサイドは説明した。石段の中途から薄暗くなってよく見えなかったので、初めはそれが水だとは気がつかず、私は先に立って下りていると、後からサイドに腕をつかまえられて立ち止まったのだが、危うく水の中に片足を突っ込むところだった。こごんで鉛筆で深さを捜ろうとしたら、鉛筆は皆隠れ、指の先がやに色に染まった。その濁水のしみはエジプトの土地を離れるまで消えなかった。数日の後、アレクサンドリアからイタリアの汽船でロードスへ行く時も、まだそのしみが気になって、キャビンの洗面所で何度も石鹸で指を洗ったほどだった。