Classiques japonais avec furigana
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しゅっせ
出世
菊池 寛
Lisez 出世 (しゅっせ) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 840 caractères · 18 écrans
いつまであんな仕事をしているのだろう。恐らく死ぬまで続くに違いない。おそらく彼らが死んでも、入場者の二、三人が、
「この頃あの下足番の顔が見えないな」と、軽く訝しげに思うにとどまるだろう。先の短い年でありながら、残り少ない月日を、一日一日ああした土の牢で暮さねばならぬ彼らに、譲吉は心から同情した。
図書館の下足の爺何時までか
下駄をいじりて世を終るらん
これは、譲吉がいつだったか、ノートの端にかきつけた歌だった。もとより拙かった。が、自分の心持、下足番の爺に対するあの同情的な心持だけは、出ているように思っていた。
あの爺も相変らずいるに違いないと思った。まだ俺の顔も、見忘れてはいまいと思った。高等学校時代に絶えず通っていた上に、譲吉は彼らと一度いさかいをしたことがあった。それは、何でも高等学校の二年の時だったろう。
彼は、その日何でも非常に汚い尻切れの草履をはいていた。その頃、彼は下駄などはほとんど買ったことがなく、たいていは同室者の下駄をはき回っていたのだったが、その日は日曜か何かで、皆が外出したので、はくべき下駄がなかったのであろう。彼が、いつもの通り、その汚い草履を手に取って、大男の方へ差し出すと、彼はそれを受け取ってすぐ自分の足元に置いたまま、しばらく待っても下足札をくれようとしなかった。