Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Lisez 刺青・秘密 (ひみつ) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 935 caractères · 66 écrans
新堀の溝が往来一円に溢れているので、私は足袋を懐へ入れたが、びしょびしょに濡れた素足が家並みのランプに照らされて、ぴかぴか光って居た。夥しい雨量が、天からざあざあと直瀉する喧囂の中に、何もかも打ち消されて、ふだん賑やかな広小路の通りも大概雨戸を締め切り、二三人の臀端折りの男が、敗走した兵士のように駈け出して行く。電車が時々レールの上に溜まった水をほとばしらせて通る外は、ところどころの電柱や広告のあかりが、朦朧たる雨の空中をぼんやり照らしているばかりであった。
外套から、手首から、肘の辺まで水だらけになって、漸く雷門へ来た私は、雨中にしょんぼり立ち止りながらアーク燈の光を透かして、四辺を見廻したが、一つも人影は見えない。何処かの暗い隅に隠れて、何者かが私の様子を窺っているのかも知れない。こう思って暫く彳んで居ると、やがて吾妻橋の方の暗闇から、赤い提灯の火が一つ動き出して、がらがらがらと街鉄の鋪き石の上を駛走して来た旧式な相乗りの俥がぴたりと私の前で止まった。
「旦那、お乗んなすって下さい。」
深い饅頭笠に雨合羽を着た車夫の声が、車軸を流す雨の響きの中に消えたかと思うと、男はいきなり私の後へ廻って、羽二重の布を素早く私の両眼の上へ二た廻り程巻きつけて、蟀谷の皮がよじれる程強く緊め上げた。