Classiques japonais avec furigana
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さんじゃくかく
化鳥・三尺角 他六篇
泉 鏡花
Lisez 化鳥・三尺角 他六篇 (さんじゃくかく) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 536 caractères · 27 écrans
三尺角
一
一
「…………」
山には木樵唄、水には船唄、駅路には馬子の唄、渠等はこれを以て心を慰め、労を休め、我が身を忘れて屈託なくその業に服するので、恰も時計が動く毎にセコンドが鳴るようなものであろう。またそれがために勢を増し、力を得ることは、戦に鯨波を挙げるに斉しい、曳々! と一斉に声を合わせるトタンに、故郷も、妻子も、死も、時間も、慾も、未練も忘れるのである。
同じ道理で、坂は照る照る鈴鹿は曇る=といい、袷遣りたや足袋添えて=と唱える場合には、いずれも疲を休めるのである、無益なものおもいを消すのである、寧ろ苦労を紛らそうとするのである、憂を散じよう、恋を忘れよう、泣音を忍ぼうとするのである。
それだから追分が何時でもあわれに感じらるる。つまる処、卑怯な、臆病な老人が念仏を唱えるのと大差はないので、語を換えて言えば、不残、節をつけた不平の独言である。
船頭、馬方、木樵、機業場の女工など、あるが中に、この木挽は唄を謡わなかった。その木挽の与吉は、朝から晩まで、同じことをして木を挽いて居る、黙って大鋸を以て巨材の許に跪いて、そして仰いで礼拝する如く、上から挽きおろし、挽きおろす。