Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

クルスかんのん

十字架観音

野村 胡堂

Lisez 十字架観音 (クルスかんのん) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 655 caractères · 27 écrans

Aozora Bunko

とって十九になったばかり、一年越し、狭い浪宅に差向いで住んでいても、祝言前の隔てを取去ろうとも、取去らせようともしない鹿の子は、お秋に比べると、あまりにも清らかな存在だったのです。

「先程遠藤様がお見えになりました」

「遠藤?」

「シモン遠藤様」

「えッ」

四方を見い見い囁く鹿の子の言葉を、余吾之介は霹靂のように聞いたか、灯の側に坐った顔が、サッと血の気を失った程でした。

「――当上様はことの外あの宗教をお嫌い故、何のような事があろうも知れない、くれぐれも気を付けるように――が、万一の場合は、卑怯の振舞のないように、とのシモン様の御言葉でございました」

慎ましく膝に置いた手をあげると、胸元でそっと十字を切って、鹿の子は余吾之介の顔を仰ぎました。

まだ誠の神の教を耳に入れようともしない余吾之介ですが、それでも近頃は、鹿の子の敬虔な日常に引入れられて、何んとなく謙虚な心構えになって行くのをどんなに嬉しく眺めて来たことでしょう。

シモン遠藤のような、江戸切支丹宗徒の中でも、並ぶ者なき能弁の先達に説かせたら、許婚の心を少しでも御心に近づける術もあるのでしょうが、近頃の禁制の峻烈さは、それさえも思うに任せぬ有様だったのです。