Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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なんぼくのとうかいどうよつやかいだん

南北の東海道四谷怪談

田中 貢太郎

Lisez 南北の東海道四谷怪談 (なんぼくのとうかいどうよつやかいだん) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 555 caractères · 34 écrans

Aozora Bunko

与茂七は火のようになった。

「これお袖、このざまはなんだ、男ほしさのいたずらか。あきれて物が云われねえ」

お袖は口惜しそうに歯をくいしばった。

「そりゃ、あんまりむごい与茂七さん。おまえこそ、現在わたしと云う女房がありながら、こんな処へ来なさるとは」

お袖には後暗いことはなかった。二人の心はすぐ解けあった。

間もなく与茂七とお袖は宅悦の家から『藪の内』と書いた提燈を借りて出て往った。其の時直助が出て二人の後を見送って閃となった。

「目あては提燈だ」

三

乞食に化けて観音裏の田圃道を歩いていた庄三郎は、佐藤与茂七に逢って衣服を取りかえた。与茂七は宅悦の家で借りて来た提燈も庄三郎にやって、

「非人に提燈はいらぬもの、これも貴殿へ」

と云って往ってしまった。庄三郎は己の風采を提燈の燈で見て、

「こんな容をしてて、仲間の乞食に見つかっては大変じゃ」

庄三郎はそれから富士権現の前へ往った。祠の影から頬冠した男がそっと出て来て、庄三郎に覘い寄り、手にしている出刃で横腹を刳った。

「与茂七、恋の仇じゃ、思い知ったか」

頬冠の男は直助であった。直助は『藪の内』と書いた提燈を目あてにしていたので、庄三郎を与茂七とのみ思いこんでいた。