Classiques japonais avec furigana
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かわいいやま
可愛い山
石川 欣一
Lisez 可愛い山 (かわいいやま) de 石川 欣一 (いしかわきんいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 98 791 caractères · 196 écrans
実はもっと遠く迄行ったのだが、それは書く必要がない。ところが上高地を出かける朝、どうも天気模様が面白くない。今にも降って来そうに思われた。そこで、靴もはき、ルックサックも背負って了って、さて五千尺の玄関で丸山さんに、
「丸山さん、番傘を一本かして下さいませんか」と申し出た。
丸山さんは二人が清水屋へでも行くものと思ったらしい。用があるなら使いをやりますといわれた。いいえ、山へ持って行くのです、というと、いささか呆れたらしいが、それでも大きな番傘を一本かして下さった。
孝男さんと私とはその二、三日前、島々から徳本峠を越して上高地まで五時間あまりでかけつけた元気を以て――これはウソみたいな話だが本当である。二人ともかなり重いルックサックを背負っていた――雨傘を振り振り五千尺を出発した。牧場をぬけ、一ノ俣で弁当を喰い、さて槍沢の小舎を過ぎると沛然たる大雨である。有名なる私の「晴天防水」――雨が降ると役に立たなくなるレインコート――なんぞは何にもならぬ。二人は早速傘をひろげ、アイスアックスを結びつけ急造の屋根をつくった。アックスを地面に立て、石をひっくりかえして乾いた方を出し、それに坐って雨にけむる四方の景色を眺めながら扱ったパイプの味は、いまだに忘れられぬ。