Classiques japonais avec furigana
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かわいいやま
可愛い山
石川 欣一
Lisez 可愛い山 (かわいいやま) de 石川 欣一 (いしかわきんいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 98 791 caractères · 196 écrans
よき山旅の思い出
土地の人の墓は五つ六つ。そうだろう、家は二、三軒しかないのだから。だが、あのツーグスピッツェにもケーブル・カーが出来たと聞く。それはエンジニヤリングの驚異だという。どうでもいい。
よき山旅の思い出
ほんの子供の時、葉山に小さな家があって、夏冬には出かけたものである。
私の家は海岸から大分遠いところにあった。ある夏の日、泳ぎに行くかわりに、何ということはなく、一人で山に登って見た。
朝晩見ていた山ではあるが、登ったのは初めてであった。細い路を尾根に出ると、驚いたことに、反対側の斜面は茅の一面生えで、そこに点々と大きな白百合が咲いていた。強い香気だった。あまりに茅が深いので、あまりに百合の香気が強いので、そしてその二つが、吹き上げる風に、まるで生あるかの如く揺れているので、恐ろしくなった。だが、家に帰った小学生の私は、日記に「これから三浦半島の山をすっかり登る決心をした」と書いたものである。
中学の二年の時だったかしら、私は筑波山に登った。初夏だった。天気はよかったのだが、下山の途中、突然霧がわいて来た。私達はぶなの林の中を歩いていた。霧はつめたく、ぶなの木は生れてはじめてだった。