Classiques japonais avec furigana
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うたのたてやましんじゅういっきょく
唄立山心中一曲
泉 鏡花
Lisez 唄立山心中一曲 (うたのたてやましんじゅういっきょく) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 30 835 caractères · 61 écrans
落葉を透かして、山懐の小高い処に、まだ戸を鎖さない灯が見えた。
小村さんが、まばらな竹の木戸を、手を拡げつつ探り当てて、
「きっと飲ませますよ、この戸の工合が気に入りました」
と勢よく、一足先に上ったが、程もあらせず、ざわざわざわと、落葉を鳴らして落来るばかりに引返して、
「退却……」
「え、安達ヶ原ですか。」
と聞く方が慌てている。
「いいえ爺さんですがね、一人土間で草鞋を造っていましてね。何だ、誰じゃいッて喚くんです。」
「いや、それは恐縮々々。」
「まことに済みません。発起人がこの様子で。」
「飛んでもない。こういう時は花道を歌で引込むんです、柄にはありませんがね。何でしたっけ、……
わが心なぐさめかねつ更科や
姨捨山に照る月をみて
照る月をみて慰めかねつですもの、暗いから慰められて可いわけです。いよいよ路が分らなければ、停車場で、次の汽車を待って、松本まで参りましょう。時間がありますからそこは気丈夫です。」
しかるところ、暗がりに目が馴れたのか、空は星の上に星が重って、底なく晴れている――どこの峰にも銀の覆輪はかからぬが、自から月の出の光が山の膚を透すかして、巌の欠めも、路の石も、褐色に薄く蒼味を潮して、はじめ志した方へ幽ながら見えて来た。