Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こうふ
坑夫
Lisez 坑夫 (こうふ) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 141 690 caractères · 283 écrans
ところがそう思うように行かんのは、人にも自分にも気の毒の至りである。
それで、自分が長蔵さんから「御前さん汽車賃を持っていなさるか」と問われた時に、自分ははっと思って、少からず狼狽えた。三十二銭のうちで饅頭の代と茶代を引くと何にもありゃしない。汽車賃もない癖に、坑夫になろうなんて呑込顔に受合ったんだから、自分は少し図迂図迂しい人間であったんだと気がついたら、急に頬辺が熱くなった。その時分の事を考えると自分ながら可愛らしい。これが今だったら、たとい電車の中で借金の催促をされようとも、ただ困るだけで、けっして赤面はしない。ましてぽん引きの長蔵さんなどに対して、神聖なる羞恥の血色を見せるなんてもったいない事は、夢にもやる気遣いはありゃしない。
自分はどう云うものか、長蔵さんに対して汽車賃はありますと答えたかった。しかし実際がないんだから嘘を吐く訳には行かない。嘘を吐きっ放にして済ませられるなら、思い切って、嘘を吐く事にしたろうが、とにかく今切符を買うと云う間際で、吐けばすぐ露現してしまうんだから始末がわるい。と云って汽車賃はありませんと答えるのがいかにも苦痛である。