Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lisez 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 46 485 caractères · 93 écrans
五
竜太郎は、モンマルトルの丘の聖心院の庭に立って、眼の下の巴里の市街を眺め渡していた。
「巴里」は灰色の雨雲の下に甍々を並べ、はるかその涯は、薄い靄の中に溶け込んでいる。まるで背くらべをしているような屋根・屋根・屋根。ぬき出し、隠れ、押し重なり、眼の届く限りはるばるとひろがっている。
右手の地平に、水墨のようにうっすらと滲み出しているのはムウドンの丘。左手に黝く見えるのはヴァンセイヌの森であろう。
廃兵院の緑青色の円屋根の上に洩れ陽がさしかけ、エッフェル塔のてっぺんで三色旗がヒラヒラと翻っている。
竜太郎は、巴里をこんなに広く感じたことは、今迄にただの一度もなかった。この大都市には、三百万の人が住み、七十五万の所帯がある。その中から、どんな方法でたった一人の少女を探し出そうというのか。
ところで、この大都会の市域の向うには、広い郊外都市がある。その向うには市郡。……その向うには仏蘭西の全土!
竜太郎は、朝から晩まで、錯乱したように巴里中を駆け廻る。博物館、劇場、喫茶店、映画館、縁日……。人が集りそうなところへはどこへでも出かけて行く。もしや、そこであの娘に不意に出逢うことがあるかと思って。