Classiques japonais avec furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lisez 夜明け前 (よあけまえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 205 629 caractères · 408 écrans
」
と半蔵は言って、二人してその掛け物の前に立った。全く神仏を混淆してしまったような床の間の飾り付けが、まず半蔵をまごつかせた。
しかし、気の置けない宿だ。ここにはくたぶれて来た旅人や参詣者なぞを親切にもてなす家族が住む。当主の禰宜で十七、八代にもなるような古い家族の住むところでもある。髯の白いお爺さん、そのまたお婆さん、幾人の古い人たちがこの屋根の下に生きながらえているとも知れない。主人の宮下はちょいちょい半蔵を見に来て、風呂も山家での馳走の一つと言って勧めてくれる。七月下旬の山開きの日を待たなければ講中も入り込んで来ない、今は谷もさびしい、それでも正月十五日より二月十五日に至る大寒の季節をしのいでの寒詣でに続いて、ぽつぽつ祈願をこめに来る参詣者が絶えない、と言って見せるのも主人だ。行者や中座に引率されて来る諸国の講中が、吹き立てる法螺の貝の音と共に、この谷間に活気をそそぎ入れる夏季の光景は見せたいようだ、と言って見せるのもまた主人だ。
夕飯後に、主人はまた半蔵を見に来て言った。
「それじゃ、御参籠はあすからとなさいますか。ここに来ている間、塩断ちをなさるかたがあり、五穀をお断ちになるかたがあり、精進潔斎もいろいろです。