Classiques japonais avec furigana
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ゆめどのさつじんじけん
夢殿殺人事件
小栗 虫太郎
Lisez 夢殿殺人事件 (ゆめどのさつじんじけん) de 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 27 755 caractères · 55 écrans
と注記した梵字の形になって終っている。次に腰辺のものは、底本が「口+羅」と注記した梵字の形をなしていて、全長は前者よりも稍長く、深さは略等しいと云って差支えなかったが、疑問は、それのみには止まらなかったのである。いずれも、傷の末端が、V字型をせずに、不規則な星稜形をなしていて、何か棒状のもので掻き上げたような、跡を留めているのだった。即ち、以上四つの創傷に就いて、その生因を瞼の裏に並べてみると、てっきり首尾を異にしているとしか思われぬような――まるで猫の爪みたいに、自由自在な隠現をするかのような兇器を、想像するより外にないのだった。法水は盤得尼を振り向いて、彼には稀らしいくらい、神経的な訊き方をした。
「何んとなく僕には、これが梵字のように思われてならないのですが」
「明らかにそうで御座います。これは、底本が「訶」と注記した梵字(訶)と底本が「口+羅」と注記した梵字(※(「口+羅」、第3水準1-15-31))の二つで御座いまして、双方ともに、神通誅戮と云う意味が含まれて居ります」
と盤得尼は、妙に皮肉にともとれる微笑を湛えて云い返した。
「成程」法水は幾分蒼ざめた顔をして頷いたが、再び屍体に視線を向け始めた。