Classiques japonais avec furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lisez 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 58 165 caractères · 115 écrans
樹下
樹下
その藁屋根の古い寺の、木ぶかい墓地へゆく小径のかたわらに、一体の小さな苔蒸した石仏が、笹むらのなかに何かしおらしい姿で、ちらちらと木洩れ日に光って見えている。いずれ観音像かなにかだろうし、しおらしいなどとはもってのほかだが、――いかにもお粗末なもので、石仏といっても、ここいらにはざらにある脆い焼石、――顔も鼻のあたりが欠け、天衣などもすっかり磨滅し、そのうえ苔がほとんど半身を被ってしまっているのだ。右手を頬にあてて、頭を傾げているその姿がちょっとおもしろい。一種の思惟象とでもいうべき様式なのだろうが、そんなむずかしい言葉でその姿を言いあらわすのはすこしおかしい。もうすこし、何んといったらいいか、無心な姿勢だ。それを拝しながら過ぎる村人たちだって、彼等の日常生活のなかでどうかした工合でそういった姿勢をしていることもあるかも知れないような、親しい、なにげなさなのだ。……そんな笹むらのなかの何んでもない石仏だが、その村でひと夏を過ごしているうちに、いつかその石仏のあるあたりが、それまで一度もそういったものに心を寄せたことのない私にも、その村での散歩の愉しみのひとつになった。