Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lisez 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 86 467 caractères · 168 écrans

Aozora Bunko

「お雪ちゃん、ちょっとお待ち下さい、誰か人が来るようですから」

そこで、お雪ちゃんが、はじめて長いお喋りの腰を折られました。

「え」

と言って、四方を見廻すには見廻したけれども、ここは長堤十里見通し、その一目見た印象では、誰も土手の前後と上下を通じて、人の近づいて来るような気配はありません。人の気配には気がつかなかったのですが、お雪ちゃんが、そのとき愕然として驚いたのは、直ぐ眼の前の宮川の岸辺に漂うた破れた屋形船であります。

ああ、思い出が無いとは言わせない、この屋形船――あの大火災の時の避難以来。

それと同時に眼を移すと、遥かに続く蘆葦茅草の奥に黒い塚がある。

あ、イヤなおばさん――お雪ちゃんの面の色が変りました。

「たれか人が来ますねえ」

それに拘らず、弁信は、長堤十里見通しの利くところで、人の臭いの近いことを主張してやみません。

その途端のこと――思い出の屋形船の一方の腐った簾がザワついたかと見ると、それが危なっかしく内から掻き上げられると、ひょっこりと一つの人間の面が現われました。その思いがけない人間の面の現出が、お雪ちゃんを驚かすと同じように、先方の面の持主をも驚かしたと見えて、現わすや否やその面を引込めてしまいました。