Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lisez 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 254 021 caractères · 495 écrans
鬼でも出たか、蛇でも出たか。いや、そんなはずはない。本来、琵琶湖の湖辺は決して猛獣地帯ではないことは、前にも述べた通りで、いかに古城址の廃墟のあとを訪ねたからとて、ジャングルの王者が現われて来るような憂いはないのです。
米友が「あっ!」と舌を捲いたのは、存外平凡な光景なので、この堀の湾入の行きどまるところに、ふり、形の面白い一幹の松があって、その下に人間が一人いたからです。その人間とても、松の木にブラ下がって、足を宙にしていたわけでもなんでもない。その幹のところにうずくまって、悠然として釣を垂れている人が一人あっただけです。
木の下に人が一人うずくまって、水の中へ釣を垂れているという光景は、どう見直したとて、しかく仰山に「あっ!」と言って舌を捲いて、驚かねばならぬほどの現象ではないのです。むしろ、極めて平和な別天地の、ゆうゆうたる光景でなければならぬ。それを、米友ほどの豪傑が、水馴棹を取落さぬばかりに驚いて、「あっ!」と舌を捲かしめた先方の人影というものは、よく見る尾羽打枯した浪人姿で、編笠をかぶって謡をうたったり、売卜をしたりして露命を行人の合力によって繋ぎつつ、また来ん春を待つといった在来の型の浪人姿が、一心に釣を垂れているだけの平凡な光景でありました。