Classiques japonais avec furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
Lisez 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 195 601 caractères · 387 écrans
「兄の仇? そんなことは……」
なんと言っても動かない声で、ふっつりと言い切って、行こうとする方へ歩み出すのを、お豊は、その杖を奪うようにして、
「竜之助様、あなたは、あの時のお約束をお忘れはなさりますまい、わたしをつれて、江戸へ落ちて下さるあのお約束をお忘れはなさりますまい、あの時のお約束通り、江戸へつれて逃げていただきたいのでございます」
「江戸へ逃げたい?」
竜之助の面の表情は、笠でまるきり知れないけれども、その声は、キリキリと厚い氷を錐で揉み込むような鋭い嘲りをも含んでいるのであります。
「わしと江戸へ逃げたい? お豊どの、お前は亭主持ちのはずじゃ」
「ええ……」
お豊は竜之助の前へその事情を自白しようとするところでした。それをどうして竜之助が知っていたのか、先を打たれて驚き且つ狼狽しました。
「それは余儀ない事情でございます……」
「余儀ない事情?」
「あなたは、あなたには、わたしの心がわかりませぬ……」
「わからぬ」
「どうぞ、下にいて、ここへおかけなすって、わたしの苦しい事情をお聞き下さいまし」
お豊は手近の岩の上を払って、竜之助の手をとってそこへ腰をかけさせて、