Classiques japonais avec furigana
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てんしゅものがたり
天守物語
泉 鏡花
Lisez 天守物語 (てんしゅものがたり) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 593 caractères · 42 écrans
薄 私はじめ、ここに居ります、誰ぞお使いをいたしますもの、御自分おいで遊ばして、何と、雨にお逢いなさいましてさ。
夫人 その雨を頼みに行きました。――今日はね、この姫路の城……ここから視れば長屋だが、……長屋の主人、それ、播磨守が、秋の野山へ鷹狩に、大勢で出掛けました。皆知っておいでだろう。空は高し、渡鳥、色鳥の鳴く音は嬉しいが、田畑と言わず駈廻って、きゃっきゃっと飛騒ぐ、知行とりども人間の大声は騒がしい。まだ、それも鷹ばかりなら我慢もする。近頃は不作法な、弓矢、鉄砲で荒立つから、うるささもうるさしさ。何よりお前、私のお客、この大空の霧を渡って輿でおいでのお亀様にも、途中失礼だと思ったから、雨風と、はたた神で、鷹狩の行列を追崩す。――あの、それを、夜叉ヶ池のお雪様にお頼み申しに参ったのだよ。
薄 道理こそ時ならぬ、急な雨と存じました。
夫人 この辺は雨だけかい。それは、ほんの吹降りの余波であろう。鷹狩が遠出をした、姫路野の一里塚のあたりをお見な。暗夜のような黒い雲、眩いばかりの電光、可恐い雹も降りました。鷹狩の連中は、曠野の、塚の印の松の根に、澪に寄った鮒のように、うようよ集って、あぶあぶして、あやい笠が泳ぐやら、陣羽織が流れるやら。