Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 954 caractères · 24 écrans
気の毒だが友吉兄哥、ちょいと隣へ行って、詫びて来てくれないか」
「御免蒙ろうよ、お前みてえな勝手な人間の手先になり度かァねえ」
友吉は頑として頭を振るのです。
「よしよし、それじゃ俺が行って来る」
綾麿はそのなりで、香折の家へ出かけて行きました。尤も夏物の怪しい羽織は大方乾いて、ドブ鼠のようになって居りますが、寒気のするほどではありません。
「御免」
「――――」
「今晩は」
何時もは一つ家のようにして居る隣の家の勝手口を、綾麿は恐る恐る覗きました。
奥では何やら母娘の争う声、四方を憚りながらも緊迫した調子の重大さに、綾麿は思わず家の中に飛込んで居りました。
「まア、お前、そんな短気なことを」
「おっ母さん、死なして下さい」
母娘は必死と、一振の短刀を奪い合いながら、争い続けて居るではありませんか。
「ま、待ってくれ、香折さん、こいつは少しわけのあることだ。早まって死なれちゃ、おっ母さんばかりじゃ無い、この綾麿も不本意だ」
いきなり飛込んだ綾麿は、香折の手から短刀を奪い取って、母娘の間へどっかと座り込むのです。濡れ腐った聟入姿のまま――それはまた何んという浅ましい風体だったでしょう。